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春とともに、景気も雪解けの気配か・・・。たしかに勤労者世帯の消費額は上向き傾向にある。一方で、これは減税効果や地域振興券等による一時的な動き、との見方も強い。今後、企業のリストラが本格化し、賃金・雇用の一層の悪化も予想される。こうしたなか、販売・流通の分野で業績を伸ばし続ける企業がある。既存の価値観に捕われない経営方針や販売戦略が、成功の大きな要因になっているようだ。まずはその実例から紹介しよう。
深夜の東京・新宿。ディスカウント・チェーン「ドン・キホーテ」には、客足が絶えない。店内には鍋からCDまで種々雑多な商品が溢れている。ノミの市さながらの雰囲気だ。安田隆夫社長が「圧縮陳列法」と呼ぶ店づくりが、顧客の購買欲を刺激しているらしい。 同チェーンは現在、東京中心に13店舗をもつ。営業時間はうち3店舗が午前10時から深夜0時までの1日14時間、4店舗が深夜2時までの16時間、残り1店舗は早朝6時までの20時間となっている。ナイト・マーケットに焦点をあてた新商法だ。 加えて、仕入れの約4割は、各部門の責任者が顧客の購買動向を把握しながら自らの手で行う。思い切った権限の委譲が、新しい顧客層の開拓につながっている。 ◆消費することの「楽しさ」を いかに演出するかがポイント 消費不況にあって、こうした成功例は意外に多い。オモチャや日用品など、特定商品を扱ったカテゴリーキラーと呼ばれるディスカウンター、廉価なカジュアルウェアを扱う外資系量販店などはその代表例といえよう。 これらに共通するのは、豊富な品揃えと低価格のワンプライス制。さらに重要なのは、業態を超えたコーディネートにより関連商品を揃え、口先ではない顧客本位の店づくりを展開していることだ。これによってエンターテインメント性が著しく高まり、なによりも店頭で顧客が楽しんでいる。いいかえれば、消費の楽しさを上手く演出しているわけだ。 ◆異業種との連携にも目を向け 顧客ニーズの徹底的な研究を さて、自動車にはかつて商品の存在そのものに「楽しさ」があった。今もそれがないとはいわない。しかし、売り手からすればその「楽しさ」に依存する時代は終わった。売り手の論理が優先する旧泰然とした商法では、消費者はなかなか動かない時代だ。 米国で急速に広がったインターネットによる自動車販売や中古車スーパーなどは、まさに新しい形で買う楽しみを提示した一つの例といえる。異業種間でそれぞれの持ち味を活かすなど、業態変革によって既存の販売店に大きなインパクトをあたえている。 系列、チャネル、テリトリー制の見直しは国内自動車業界でも大きな話題の一つだ。メーカーを中心とした業界再編のうねりは、すでに形となってあらわれつつある。こうした状況下、旧来の方法論で将来を見通すことは極めて困難だ。視野を広げ、顧客ニーズの徹底した研究から生まれる新しい発想が、生き残りには不可欠になっている。
アーリア行政書士法人発行 季刊情報誌「FOUR SEASONS」1999年春号Vol.09 取材・文/大西昭彦(経済ジャーナリスト)
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